店頭状況を把握出来る報告項目の徹底
フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の活動に“バラツキ”が起きるのはどうしてでしょうか?
まずその背景として、特に大きな組織の場合では、活動指示(PLAN)のサイクルにおいて[ 図中(1)の箇所 ]活動を指示する立場の本部担当者と、指示を受ける店舗担当者が複数名存在しており、指示の出し手と受け手がきれいに縦割りで組織化されているわけではなく、複雑に絡み合っているという組織上の問題点が挙げられます。
また活動報告(CHECK)のサイクルにおいて[ 図中(2)の箇所 ]も同様に、活動を報告する店舗担当者と報告を受ける本部担当者が複数名存在し、複雑に絡み合っています。
このような状況において、2つのPDCAサイクルを回すためには、お互いがルールに基づき、指示の出し手は必要な情報を提供し、指示の受け手は必要な情報を収集することが必要です。
しかしながら、現状は本部担当者ごとに指示を出すタイミングや指示項目が違っています。したがって、複数の本部担当者から指示を受けた店舗担当者は、商品や企画の重要性に基づいた優先順位をつけることができずに、「自身の過去の経験」や「活動のしやすさ」「人間関係のできている店舗」などを基準に活動の優先順位を付けてしまいがちです。なぜならば、店舗担当者にとってこの基準で優先順位をつけることが、一番効率的で効果的に活動することができるからです。
確かに、この方法は従来のフィールド活動(ラウンダー活動)の考え方からすると正しい選択であり、属人的な力量に依存している場合、最も効果を上げる選択です。したがって、長くフィールド活動(ラウンダー活動)を行ってきた企業がこのような運営をしてきたことは、当然でありごく自然な成り行きであったと思います。
しかしこれからの組織小売流通でのフィールド活動(ラウンダー活動)では、本部担当者との連携がますます重要になってきています。すると現在のように非常に速いサイクルで店頭状況が変化している時代では、属人的資質に頼ったフィールド活動(ラウンダー活動)では、点(個々の店舗)での効果は上げられても、面(チェーン全体)での効果を上げることは難しくなっていると考えられます。
活動指示においては、店舗担当者に活動の内容を理解してもらうことがとても重要ですが、それ以上に、的確に店頭状況を把握出来る報告項目を徹底していくことが重要になっています。そして、既に多くの大手消費財メーカーが上記のような取り組みを行っており、確実に成果を上げています。
具体性や納得性の高い情報を受けるために
一方、活動報告をチェックするシーンにおいても、未だに活動日報を紙ベースで行っている場合、本部担当者が情報を的確に得ることが出来ない問題が起こります。広範囲なエリアを担当している店舗担当者の場合、活動効率を上げるために、距離の近い順に1日で複数チェーンの店舗を訪問することになります。その場合、活動日報にはチェーンがランダムに並んで記入されることになります。
一方、活動報告を受ける本部担当者は活動日報の中から自身が担当しているチェーンだけを読んでいくことになり、効率が非常に悪くなります。また、情報が断片的になってしまうため、個店対応には支障がなくても、チェーン全体の状況を把握するには記憶に頼らざる得なくなります。そうすると、情報が曖昧で具体性や納得性の低いものとなってしまい、本部商談の際に店頭情報として活用するには説得力の欠いた情報となってしまいます。
これらの問題点を解決し、具体性や納得性の高い情報を受けるためには、活動報告の手法にITシステムを活用することが最も有効な方法だと思います。膨大な情報を瞬時に収集し仕分けするには、人的作業では時間がかかりミスも起こりがちです。一方ITシステムを利用することで、広く早く情報を共有できるようになります。
営業担当者にとって、ITシステムの導入に対するイメージは、「管理強化」や「活動の一律化」という自分たちを機械的に縛り付ける仕組みと捉え、抵抗感を感じる傾向があります。しかしながら現在のITシステムの活用目的は、店頭マーケティングの確立が主たる目的であり、マーケティング部門および営業部門における組織全体にかかわる機能強化の実現に必要不可欠な仕組みであると考えられています。
木名瀬 博のフィールド虎の巻
序章
第1章 消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)
- 第4回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その1)
- 第5回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その2)
- 第6回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その3)
第2章 本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか
- 第7回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その1) 〜チェーン活動指示の出し手と受け手の関係〜
- 第8回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その2) 〜本部担当者が見たい使いたい情報とは?〜
- 第9回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その3)〜チェーン別活動報告書の標準化〜
第3章 フィールド活動(ラウンダー活動)によって得られる情報の活用方法
第4章 フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント
- 第12回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント(その1:フィールド活動(ラウンダー活動)の目的の再設定)
- 第13回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント
- 第14回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント その2
- 第15回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント その3
第5章 フィールド活動(ラウンダー活動)の分類と役割
第6章 店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方
- 第19回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方 (1)
- 第20回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(2)
- 第21回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(3)
- 第22回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(4)
- 第23回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(5)
- 第24回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(6)
第7章 営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル
- 第25回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(1)
- 第26回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(2)
- 第27回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(3)
- 第28回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(4)
第8章 事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果
- 第29回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(1)
- 第30回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(2)
- 第31回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(3)
- 第32回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(4)
- 第33回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(5)
- 第34回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(6)
- 第35回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(7)
- 第36回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(8)
- 第37回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(9)
第9章 フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態
- 第38回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(1)
- 第39回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(2)
- 第40回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(3)
- 第41回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(4)
- 第42回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(5)
- 第43回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(6)
- 第44回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(7)
第10章 フィールドスタッフのスキルとモチベーション
- 第45回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(1)
- 第46回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(2)
- 第47回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(3)
- 第48回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(4)
- 第49回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(5)