クロスMD(マーチャンダイジング)による販促を提案する場合、併売率の高い組み合わせを発見することが重要です。大手乳業メーカー様を例に、POBデータの併売レポート分析を活用し、実際に本部商談で自社商品の優位性を裏付け、バイヤー提案の説得力をアップさせた成功例を紹介します。
POBデータ紹介
mitorizのレシート分析サービス「Point of Buy®(以下、POBデータ)」は、全国の消費者から実際に店頭購入した「レシート」と、その購入者の「購買理由」を紐付けてデータ化したもので、商品の購買動向が把握できる「POSデータ」や「ID-POSデータ」とは異なり、POBデータは「お客様ごとの購買理由と購買動向がわかる」ことが強みです。
レシートに印字されている商品名は、同一商品であってもチェーンごとに異なります。そのため弊社では、整備した独自の商品マスターデータとユーザーを紐づけることで、網羅性のある購買情報を把握することができ、一連の仕組みは、ビジネスモデル特許を取得済みです。また、JANコードのない商品(生鮮・総菜・PB商品など)もデータ化しています。
POBデータでは、購買エリア/店舗(チェーン)/時間の他、購買理由アンケートによる、同時購入された併売情報や購買単価といった行動レポートを取りまとめ、自社の商品が、どのチェーンで、どの年齢層に、どんな理由で、どの商品と一緒に購入されているかなど、実購買に基づいたデータ分析ができます。
メーカー様の課題
本事例の大手乳業メーカー様(自社商品:ヨーグルト)は、小売り商談の際に商談材料が不足しており、企画採用へ至るためのメリットを感じてもらえる魅力的な提案が難航し、大手他社メーカーと商品の差が付けにくいなどの課題がありました。
フルーツメーカーとのクロスMD(マーチャンダイジング)提案を進める中で、併売の根拠となる『自社商品の購入層が「フルーツを併売する」仮設はあるが、根拠となる数値が無いこと』が、ネックになっていました。
今回は、メーカー・小売り担当者が「クロスMD(マーチャンダイジング)」提案をする際の、データ活用にフォーカスをあてて、mitorizのPOBデータを用いた5つの切り口を元に、仮説に基づく根拠を検証していきます。
<調査・分析>
1.自社と他社(競合)のヨーグルトとの併売状況を比較した場合
初めに、ヨーグルトがどんな商品と一緒に購入されているか(併売)を競合商品と見比べていきます。
図表1は、A社自社の主力ヨーグルトが、どの商品カテゴリーと一緒に購入されているか(併売)表し、図表2は、B社競合他社の主力ヨーグルトの併売を表したものです。
図表内の用語を解説すると、「レシート出現率」は、併売は関係なくそのレシートが出現する割合で、「リフト値」は、併売率からレシート出現率を割った数値となります。
そして「併売状況」は、リフト値でみることが一般的です。一般的に「リフト値が1以上ある場合」は、併売傾向があり、「リフト値が2以上ある場合」は、諸説ありますが、関連性が高いと言われています。
また、牛乳や納豆などピンク色の商品カテゴリーは、ヨーグルト売場の近くにある日配商品です。食パン、ソーセージ類は、朝食用に購入される傾向が高い商品のため、「ヨーグルト」と関連性があるカテゴリーとなります。
上記を踏まえて、2社のヨーグルトの併売状況を見比べてみると、ピンク色の日配商品である、「牛乳・納豆・豆腐・チーズ」などの商品カテゴリーにおける「リフト値」の順位は、A社・B社異なりますが、同一の商品カテゴリーが並んでいることがわかります。
ここで着目したいのが、黄色のヨーグルトカテゴリーにおける「併売率」です。
自社のヨーグルトと、他ヨーグルトカテゴリーの併売率は、(12.6%)ですが(図表1)、競合他社のヨーグルトは、他ヨーグルトカテゴリーとの併売率は、(15.9%)となりました(図表2)。
この結果から、A社大手乳業メーカー様のヨーグルトはヨーグルト同士の併売が起こりづらいと考え、他社のヨーグルトに比べて「目的買いをされている傾向が強い」ことが推測できます。
2.自社と他社(競合)のヨーグルトとフルーツの併売状況を比較した場合
次に、ヨーグルトとフルーツは一緒に購入されるケースが高いという仮説を元に、併売状況をみていきます。
「図表3」では、自社のヨーグルトが、どのフルーツと併売されているかを表し、「図表4」では、競合他社のヨーグルトを表したものです。
その結果、自社および、競合他社のヨーグルトは、いずれも「キウイフルーツ」、「バナナ」がリフト値の上位を占め、自社ヨーグルトは、「バナナ(リフト値4.61)」よりも「キウイフルーツ(リフト値6.53)」が、併売傾向が強いこともわかりました。
3.フルーツと併売されているカテゴリー分析
さらに自社のヨーグルトが、競合他社のヨーグルトと比較して、フルーツの「併売率の高さ」証明するために、フルーツの併売率が、1位「キウイフルーツ」と2位「バナナ」の併売状況もデータから分析します。
その結果、ヨーグルトの併売状況と同様に(図表3)、フルーツ側から見てもヨーグルトは上位に入り、併売率の高いことがデータからわかりました。
4.フルーツとのヨーグルト商品の併売状況
さらに、フルーツの併売状況で、1位キウイフルーツと2位のバナナを軸に、A社大手乳業メーカー様と、競合他社B社~F社を含めた「ヨーグルト商品」の併売商品をさらに分析します。
図表内の下(黄色)に記載した、A社大手乳業メーカー様のヨーグルトは、「キウイフルーツ」および「バナナ」との併売率は、競合他社ヨーグルトに比べリフト値が高く、特にキウイフルーツとの併売傾向が強いことが見受けられます。
ここまでの分析結果でPOBデータの活用方法として伝えたいことは、
2~4の調査でヨーグルトはどのフルーツとの併売が多いか、併売上位のフルーツはどんなカテゴリー商品と併売されているか、そしてそのフルーツはどのようなヨーグルト商品と併売されているか、1つの側面からではなく3方向から見ていくことができるように、立てた仮説からさまざまな切り口で分析できることです。
5.競合他社商品とレシート1枚あたりの金額の比較
さらに、自社商品の購入層を把握するために、大手食品メーカー様の主力ヨーグルト商品と競合他社の主力ヨーグルト商品の購入が含まれているレシート分析を行いました。
上図からは、2社ともにレシート1枚あたりの平均購入個数は、(10.7個)で同一ですが、購入商品の1点単価は、大手食品乳業メーカー様のヨーグルトを購入したレシートが(223円)、競合他社のヨーグルトを購入したレシートの1点単価、(176円)よりも、+47円大きいことがわかり、大手乳業メーカー様のヨーグルトの購入層は、「家計に対して食費に余裕がある」、「こだわった商品を購入する傾向」などが推測できます。
<メーカー様の課題に対するまとめ(分析結果)>
・併売されているフルーツについての根拠が得られた
分析前までは、「ヨーグルトとフルーツの併売率」に関する具体的な数値根拠はなく、大手食品メーカー様の経験や感覚だったヨーグルトとのフルーツの併売状況が、POBデータを分析することで、キウイが最も傾向が強いとの根拠が得らました。
これにより、今後のフルーツメーカーとの企画提案の際により具体的な提案材料のひとつとなりました。
<メーカー様の声>
・購入商品単価から購入層の傾向を知ることができた
今回のPOBデータ分析から、大手食品メーカー様の主力商品のヨーグルトの方が、購入商品1個あたりの単価が高く、食費に余裕があり、目的買いされる傾向が高く、高くても質が良いもの、気に入っているものを購入する層であることがわかりました。
購入状況を分析することで、購入層を把握し、競合商品との差別化や優位性をもって今後の商談に生かせる材料となりました。