効果的なマーケティング施策を行うためには、消費者の行動やマインドを知ることが大切です。レジを通して、実際に商品を購入した消費者の情報が蓄積されるPOSデータを取得し、役立てたいと考えている企業は少なくないでしょう。
しかし、POSデータだけを見ればすべての消費者の行動をカバーできるわけではありません。ここでは、POSデータでできることとできないことのほか、POSデータでできないことを補うための方法について解説します。
POSデータとは?
POS(ポス)とは、「Point Of Sales」の頭文字を取った言葉です。直訳すると「販売時点」という意味で、その販売した時点の消費者の情報を即座に記録するためのレジを「POSレジ」、それが記録されたデータを「POSデータ」と呼びます。
いまや、ほとんどの小売店のレジに、POSレジが導入されていると考えて間違いありません。POSレジを通して商品を販売すると、販売した商品や時間、金額などがデータとして自動的に蓄積されていきます。このデータは、小売店が在庫確認をしたり、商品の仕入数を検討したりする際に活用されるのです。
POSデータからわかること
POSデータに記録される情報は、レジで商品のバーコードを読み取った際にわかる情報と同じです。その情報とは、購入された商品、時間、金額です。さらに、そのデータは店舗がPOSレジを使い始めた時点から蓄積されていますから、圧倒的な量の事実にもとづく販売データを得ることが可能です。これは、POSデータの大きな強みといえるでしょう。
蓄積したPOSデータを分析すると、一人の顧客が平均何点の商品を購入したのか、また買い物1回あたりの平均単価はいくらなのかなどもわかるようになります。蓄積できるデータは、POSレジの種類により変わります。購買行動をより効果的に分析するために、どのようなデータが必要かを明確にしておくことも重要です。
人の情報と結びついたID-POSデータ
多くのスーパーマーケットやドラッグストアで導入しているポイントカードは、小売店の情報収集に役立っています。ポイントカードには、顧客の性別や年代といった情報が登録されています。つまり、買い物の際に消費者がポイントカードを使うことで、どの商品が売れたのかだけでなく、どのような顧客が買ったのかまで把握できるのです。このような「人」の情報と結びついたPOSデータを、「ID-POSデータ」と呼びます。
なお、ポイントカードには、複数の店舗で利用できるタイプのものもあります。こうしたタイプのポイントカードの運営企業と提携すれば、例えば同じチェーンの店舗での購買データだけでなく、他店の購買データも把握できるようになります。つまり、より幅広い消費者の購買行動を知ることができ、マーケティングに活用できるのです。
POSデータをマーケティングで活用するには?
小売メーカーがマーケティングを行う上で、POSデータを有効活用すべきなのは理解いただけたかと思います。では、POSデータが収集されてから実際に活用されるまでの流れと、代表的な分析手法について見ていきましょう。
POSデータの取得から活用までの流れ
店舗で消費者が商品を買い、POSレジで会計をすると、そのデータが店舗のPOSシステムに蓄積されていきます。この店舗がチェーン店ならば、各店舗のデータは小売店本部に集積されて、その後のマーケティング施策に活かされることになります。
通常、POSデータは自社の外に出ることはないものです。ただ、チェーン店によっては取得したPOSデータを小売メーカーに提供したり、POSデータを収集・販売している業者に提供したりする場合もあります。競合他社のデータが知りたい小売メーカーや、幅広く自社製品の販売状況を知りたい小売メーカーなどは、POSデータを販売している業者を利用すれば、POSデータの取得が可能です。
ただし、このような業者は具体的な店舗名などをマスキングするため、得られる情報が限定的となります。
POSデータ分析の代表的な手法
POSデータ分析には、切り口によってさまざまな手法があります。代表的な手法としては、トレンド分析とバスケット分析が挙げられるでしょう。
・トレンド分析
トレンド分析は、商品が売れている時期を知るための分析方法です。特定の商品を取り上げて、1年間の売上推移を見ることで、売上の伸びる月や曜日、時間帯などを知ることができます。この情報から、小売店はシーズン商品を、いつ、どのくらい発注すべきなのかを決めることが可能です。メーカー側も、POSデータの提供を受けられれば、売上推移をベースに小売店本部と積極的に商談を行うことができるようになります。
また、曜日別や時間別のデータから消費者のニーズが見えれば、売り場の構築や販促に活かすこともできるでしょう。
・バスケット分析
バスケット分析は、ID-POSデータを利用したデータ分析です。ある商品とほかの商品が、どの程度一緒に購入されているのかを分析する手法となります。
例えば、「飲料Aを購入した人のうち、70%が食品Bを購入していた」という結果が出た場合、AとBを近くに並べたり、セット販売をしたりすることで、売上が伸びる可能性が高まります。さらに、「30~50代の男性の80%は、飲料Aを購入した際に食品Bを購入する」ことがわかったら、その該当ターゲットに向け、効果の高いマーケティングを行いやすくなります。
POSデータの課題
POSデータは、多くのデータを蓄積し、分析に活用できるというメリットがあります。しかし、POSデータはあくまでも数字でしかありません。購買行動の裏には必ず消費者の意思があり、この意思を正確に把握できなければ、適切なマーケティングは行えないものです。
例えば、POSデータで「商品Aは7月に売上が伸びる。ただし、今年は6月に売上が伸び、7月は6月と同水準だった」ということがわかったとします。この理由として、メーカー担当者は「今年は暑くなるのが早かったから」と考えるかもしれません。
しかし、この理由もそのままでは仮説の域を出ません。また、POSデータを別のデータと組み合わせることで、ある程度理由の見込みをつけることができるかもしれませんが、それもあくまでも「そう推察される」程度のものでしょう。つまり、消費者の購買行動はわかっても、それを買った理由がわからない点が、POSデータの持つ大きな課題だといえます。
ほかにも、POSデータは、基本的に自社のデータしか手に入らないことが課題です。POSデータの売買を行う業者もありますが、これらの業者は店舗を開示しないことから、特定のチェーンに絞って分析を行うといったことはできません。
消費者のリアルがわかるmitorizの「POB」
POSデータの課題である「消費の理由」を知るために有効なのが、mitorizが提供している「Point of Buy®(POB)」のデータベースです。
POBデータとは?
POBデータは、消費者が商品を購入した際のレシートのデータを収集・蓄積したデータベースです。レシートはPOSレジから発行されるものですから、POSデータと同様の情報を得ることができます。これに加えて、個人からレシートを収集することで、ID-POSと同様にその人の属性もわかります。
さらには、POBサービスでは、レシートを提供してくれる消費者に対するアンケートを実施することも可能です。これにより、「なぜその商品を買ったのか?」「なぜA社の商品ではなくB社の商品を買ったのか?」「なぜ前回は小売店Cで買った牛乳を今回は小売店Dで買ったのか?」といった、細かい理由を知ることができます。
消費者のマインドを知るためのそうしたアンケートは、メーカーや小売店主導で行うことも可能です。しかし、POBサービスを使えば、レシートをもとに「実際に商品を買っている消費者」に対して確実にアンケートがとれます。また、購入したタイミングや場所を限定してアンケートに答えてもらうことも可能です。そのため、より正確に消費者のマインドを知ることができるのです。
POBデータの活用法
POBデータは、さまざまな用途に活用が可能です。例えば、POSデータではわからない他社チェーンの状況や、それぞれの店舗を消費者がどのように使い分けているのかなどが、POBデータならわかります。
「コンビニAとコンビニBでは、それぞれどのようなカテゴリの商品が売れているのか?」「消費者が商品Aを購入する際に訪れるのは、スーパーマーケットとドラッグストアのどちらが多いのか?」といった細かい分析も、POBデータなら簡単にできるのです。
また、新規分野への参入を目指したい場合も、POBデータは役立ちます。その新規分野で、消費者がどのように商品を選んでいるのかがわかるので、消費者のニーズにより合った商品開発やマーケティング施策をとることができるのです。
POSデータの裏づけにPOBデータを活用しよう
POSデータとPOBデータを組み合わせて活用することで、消費者の行動がより鮮明に見えてきます。蓄積された莫大なデータ量が強みのPOSデータと、個別の消費者ごとのマインドやチェーンごとの状況をより明確に知ることができるPOBデータを組み合わせることで、POSデータから導き出される仮説の裏づけができるようになるのです。
POBデータは活用法も幅広く、活用することでメーカーと小売店の両方にメリットがもたらされます。POBデータの詳しい活用事例や導入メリットについては、mitorizまでお気軽にお問い合わせください。消費者を知り、効果の高い戦略を実行するために、POBデータを有効に活用しましょう。