それでは今回から具体的に、量販営業・店頭販促におけるフィールド活動(ラウンダー活動)についてお話していきます。まずは、フィールド活動(ラウンダー活動)を考えるにあたり、日本の人口推移と消費動向の変化、それに合わせた流通構造の変化を、時代を追って見ていきたいと思います。
日本は戦後、高度経済成長を経ながら人口の増加に支えられた右肩上がりの消費動向で推移してきましたが、2007年に初めて総人口が減少すると同時に、人口の増加率も踊り場となり、現在では世界的な経済不況の波に飲まれながら、消費動向も急激に減速しています。 このように、人口推移曲線を流通の特徴に合わせると、非常に似たところがあり、興味深く見ることができます。それでは、それぞれの時代ごとに特徴を見ていきましょう。
1.出せば売れる時代
まず、高度経済成長に支えられた「出せば売れる時代」は、流通チャネルに対し個人営業力で商品を販売すれば売れていった時代です。高い消費の伸びに支えられているため、いかに多くの商品を生産し、流通の流れを確保し、店頭に並べるかが最も重要な活動であり、そのため営業的な、ともすると非常に泥くさい人間関係構築がとても重要視されていました。
2.大型店化の時代
次に、日本人の生活レベルが飛躍的に向上した総中流化の時代には流通業界でも「大型店化の時代」へと変化しました。“大量生産・大量消費”を効率的に行えるチェーン店化・大型店化が進み、流通本部による企画展開を組織的に行う営業スタイルへと変化していきました。
3.多極化の時代
その後、人口の増加が鈍化してきた低成長社会は、見方を変えれば必要なものが何でも揃う成熟化社会といえます。すると、消費者は他者と差別化できる個性や付加価値を商品に求めるようになりました。それに伴って流通業界でも、GMS(※1)・百貨店とは違う専門業種に絞った組織チェーン展開が進み、従来の業態の枠にあてはまらない店舗展開となり「多極化の時代」となりました。そして消費者は利用目的・シーンによって細かく商品・サービスを使い分け、さらにインターネットの普及に拠り、店舗に行かなくても豊富な情報を入手できるため、専門的で鮮度の高い多面的な情報に裏打ちされた消費行動をとれるようになりました。その結果、ネット上での仮想店舗による商品流通が確立しました。そのようなお客様と接する流通のサービス現場では、既成概念を超えた変化に対して柔軟な対応をとる必要があり、組織間の情報連携と個々人の応用力が求められるようになりました。
4.コミュニティ化の時代
そして人口減少による影響が消費動向に顕著に表れ始めてきた現在、一度つかんだ顧客は離さない、顧客の固定化や顧客とのコミュニケーションを強化し囲い込むような「コミュニティ化の時代」へと移行していきます。そのようななかで、企業は自社商品・サービスを繰り返し利用してくれるリピーターや商品・サービスの良さを口コミで伝えてくれるサポーターを作っていく活動を強化し始め、そのために、今まで以上に顧客の声を聞き、意見や満足度を把握する必要が出てきました。いわゆるアフターフォローマーケティングという概念が見直されてきたともいえます。
5.パーソナル化の時代へ
将来の日本は、2030年ごろには人口が1億人を割り込み超高齢化社会となります。消費全体も小さくなる中で利益を上げるには、個々のニーズに細やかに対応した商品・サービスが求められ、効率化だけでなく高付加価値化を実現できている企業のみが生き残るのではないかと考えられます。このような「パーソナル化の時代」では、常連顧客を絞り込み、嗜好を反映した「買い場」作りを常に提供し続けることが必要です。「多極化の時代」から「コミュニティ化」、「パーソナル化の時代」へとマーケットの形態が変遷していく今こそ、企業は従来の人口増加による需要増大に支えられた営業システムから脱却する時だと考えます。
[ 注釈 ] ※1 日常品を中心に商品を総合的にそろえた大規模小売店のこと
木名瀬 博のフィールド虎の巻
序章
第1章 消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)
- 第4回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その1)
- 第5回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その2)
- 第6回:消費者接点として重要性を増す店頭のあり方とこれからのフィールド活動(ラウンダー活動)(その3)
第2章 本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか
- 第7回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その1) 〜チェーン活動指示の出し手と受け手の関係〜
- 第8回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その2) 〜本部担当者が見たい使いたい情報とは?〜
- 第9回:本部商談結果と店頭をどのように連携・連動させるか(その3)〜チェーン別活動報告書の標準化〜
第3章 フィールド活動(ラウンダー活動)によって得られる情報の活用方法
第4章 フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント
- 第12回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント(その1:フィールド活動(ラウンダー活動)の目的の再設定)
- 第13回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント
- 第14回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント その2
- 第15回:フィールド活動(ラウンダー活動)をさらに強化するために見直すべきポイント その3
第5章 フィールド活動(ラウンダー活動)の分類と役割
第6章 店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方
- 第19回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方 (1)
- 第20回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(2)
- 第21回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(3)
- 第22回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(4)
- 第23回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(5)
- 第24回:店頭で競合他社より優位に立つためのフィールド活動(ラウンダー活動)体系の見直し方(6)
第7章 営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル
- 第25回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(1)
- 第26回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(2)
- 第27回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(3)
- 第28回:営業担当者とフィールド業務をつなぐ2つのPDCAサイクル(4)
第8章 事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果
- 第29回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(1)
- 第30回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(2)
- 第31回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(3)
- 第32回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(4)
- 第33回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(5)
- 第34回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(6)
- 第35回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(7)
- 第36回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(8)
- 第37回:事例で解説、フィールド活動(ラウンダー活動)のポイントと成果(9)
第9章 フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態
- 第38回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(1)
- 第39回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(2)
- 第40回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(3)
- 第41回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(4)
- 第42回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(5)
- 第43回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(6)
- 第44回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)の契約形態(7)
第10章 フィールドスタッフのスキルとモチベーション
- 第45回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(1)
- 第46回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(2)
- 第47回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(3)
- 第48回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(4)
- 第49回:フィールドスタッフ(ラウンダースタッフ)のスキルとモチベーション(5)